top of page

値段を決める側と決められる側

マネジメントゲーム(以下MG)という研修で利益感度という講義を行っています。どういうものかというと、P(価格)、V(原価)、Q(数量)、F(固定費)の4つの要素がG(利益)に対してどれだけ感度が高いかと言うことです。


詳細は、MGに参加してもらえばわかりますが、どんな業種でも基本的にはP感度が一番高くなります。つまり、価格を少し下げると利益がびっくりするほど減るし、価格を少し上げると利益がかなり増えます。だから、安易な値引きは危ないよ! ということを伝えています。


この講義を私が初めて聞いたときに、うちの会社でPを上げたら、お客さんは、他社に切り替えて、Qが0になるぞ! いくら感度が高いと言っても、Pは上げれないと思いました。しょせん机上の空論だなぁと思ったのが第一印象です。


MGに参加している人にいろいろと聞いてみましたが、満足を得る答えは返ってきませんでした。ある時牟田学さんの「社長学」と言う本を読んで納得しましたので紹介をさせていただきます。


牟田さんは、事業には、建設業、出版業、農業、食品製造業、塗装業などいろんな業種があるが、業態は二種類しかないと言われています。


何だと思いますか?




受注型と見込み型の二種類だけだ!と言われています。




建設業でいうと、元請けは、見込み型です。下請けは受注型。出版業だと、出版社は見込み型ですが、印刷会社は受注型になります。農業だと直売は見込み型、JA出荷は下請けです。


受注型は親会社(発注者)から数量は支配され、価格も支配されがちです。そのころ私は弟と一緒に素麺の木箱屋を経営していました。経営と言っても相手が決めたサイズの木箱を注文された数量だけ納品をしているだけ。それでも私は木箱製造業だと思っていました。ある時MG仲間から辻さんのところから箱を買いたいけど、どんなサイズの木箱があるの?と質問されました。私は、サイズ、数量を言ってくれたら見積するよ。と答えました。


相手は、2個でいいんですよ。と言うのです。2個では木箱は販売できないぞ! と思いながら、聞いてみると、当社にいろんなサイズの木箱が在庫されていて、一番見合ったサイズの木箱が欲しかったようです。


その話を聞いて、私はやっと気がつきました。一般的に、メーカーというと、いろんなバリエーションの商品を持っていて、すぐに出荷ができるというイメージです。例外的に、オーダーメイドもありますが、いちいち、お客さんの要求を聞いてから商品を作るってないですよね。うちはメーカーではなく、下請けだったのです。


牟田さんの本には、受注型は儲かりにくい体質。業績は得意先に依存する。販売しているのは、技術力、納期、サービス、価格。相手との人間関係。見込み型は価格、数量とも自社で決める。大儲けできるが、大損もする。販売しているもは、商品、サービスそのもの。顧客は不特定多数と書かれていました。


この本を読んで、うちは受注型だから、いくらランチェスター戦略を学んでもMGを学んでも、師匠に学んでもなかなか業績がアップしないのも納得しました。はっきり言えば下請け体質だったらかです。


この木箱屋で、もし値上げしたたら、お客さんが他社に変わる可能性が高いと感じていました。ということは、売っているものは低価格と言う価値だけですね。相手が認めているのは低価格と言う価値で、そう言う価値感の人たちに、ランチェスターで学んだ接近戦であるハガキを書いたり、ニュースレターを送っても効果は薄いですね。


この下請けの弊害にも気がつきました。それを「下請け脳」と名付けます。先日、A社長から、一倉定さんが提唱する蛇口戦略をやったらいいよとアドバイスをもらいました。蛇口戦略とは、中間業者を挟んで商品を販売していても最終の顧客に定期訪問をするのです。中間業者は、あくまでも自社の利益を考えるので、うちの商品だけを営業してくれるわけはありません。また、お客様のニーズを掴みやすいというメリットがあります。


蛇口戦略を行った後に、A社長に「多少は売れましたが、経費分は賄えないですね。」と報告すると、「顧客のお困りごとは、なかったですか?」と言うのです。

「そんなこと聞くのですか?」というと、「それを聞かなきゃ蛇口戦略にならないよ。お客様の困りごとを解決するための糸口を探るのが蛇口戦略だよ」と言われました。


私が行ったことは、単に最終のお客様を訪問して、今販売している商品を紹介しているだけでした。これは、下請け時代に似ています。やったことは、お客の顕在化した要求に応えようとしているだけでした。


元請けのように、お客の潜在化しているニーズをくみ取って、顕在化させようとする工夫がありませんでした。顕在化されたニーズですから、だいたいは値段勝負になりますね(笑)。しかし潜在化しているニーズは、そう言う問題を解決してくれるのか! という思いがあるから、値段勝負になりにくいですね。


木箱屋では、営業と言ってもお客さんが求めるサイズ、数量でしか見積もりしたことがありません。こちらから提案なんてありません。つまり受け身なのです。こんな木箱に入れれば御社の商品は売れますよ! と言ったこちらからお客さんの課題を解決するようなアプローチをしたことがなかったわけです。「下請け脳」とは、この受け身の考え方を言います。


師匠が、頭を下げる方と下げられる方なら、下げる方の方が儲からないよ。と教えていただいていましたが、まさにその通りだと思いました。値段を決める(頭を下げてもらう)ポジションになるために、「下請け脳」から脱却する。まずは、お客様の困りごとを聞いていく。わが社の持っている資産や経験でそれらを解決できる方法を考えて試してみる。こうやって、少しづつでも元請けになる要素を増やしていく。本当の意味でのメーカーになることが、大事だなぁと思いました






​研修(MG)予定

bottom of page