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理念経営

私が高校生のころ、父親の会社が倒産しました。そのころは、取り立て屋が家に来ると言われていた時代でした。


母親が涙を流しながら、「これをあんたの部屋に隠しておいて」と言われ、50万円くらいが入った封筒を渡されたのが今でも目に焼き付いています。このとき、私は「自営業(経営)=危ないもの」と学びました。


なのに今、会社をやっているのは、再度、父親が起業をして、途中で大病をして経営ができなくなったからです。父の代わりに経営をすることになった私の一番の目的は倒産をさせないことでした。倒産しないために経営の勉強はしました。いくら勉強をしても、倒産の恐怖で、人を雇わない。新しい機械は買わない。新規事業はやらない。


車でいえば、アクセル(業績を良くしようとする)とブレーキ(倒産が怖い)を同時に踏んでいる状態でした。とても苦しい状態でした。こんなときに、ある経営計画を作成する勉強会に参加しました。まず初めに会社の理念を作成しましょうと言われました。この言葉を聞いたときに、「理念で飯が食えるか!」と思いました。結局、この勉強会では理念が作りきれませんでした。


経営の師匠からも、理念を会社に落とし込むためにもその商売や製品を通じて相手に与えているイメージや印象をワンワードで表現しましょうとアドバイスをいただきましたが、土台である理念がふらふらしているので、ワンワードも中途半端でした。


私には経営理念がなかったので、経営の目的は、お金になっていました。毎期、赤字にならないかと不安で、経営が苦しいものだと思うようになりました。今回のコロナ融資のおかげで、個人保証が外れました。倒産→個人保証→自己破産の呪縛から解放をされました。こうなると、何をやってもいいと思えるようになりました。以前の私の姿を振り返ってみて、私は幸せを求めているのに、経営して苦しむのは間違っていることだと思いました。


経営とは、自身の命を使って、使命を果たすこと(かもしれない)と思えるように変わりました。自分に矛盾のない経営(理念に向かう)を目指すことが大事と気が付きました。


考え方が変わると、チャンスが巡ってきますね。先日、一倉定さんに学ばれて、今も一倉方式で経営をされている社長とご縁をいただきました。早速会社訪問をさせていただきました。


まず、驚いたのは、環境整備を毎日一時間されているのです。環境整備とは、掃除ではなく、自分と向き合う時間ですから、一時間かけるのですとおっしゃっていました。繁忙期でも毎日実行されています。


また、話の途中で「社員の幸せ」というワードが出てきました。すぐさま、「社員の幸せ」というのはどう定義されていますか? あるいはどういう状態ですか? と質問をしました。


皆さんならどう答えますか?


少し考えて、こう答えられました。「朝出社したときに、大きな声であいさつしている。声が小さかったら、何か心配事があったり、体調が悪かったりするものです。そんな時は家に帰ってもらいます」と脱帽です。


この社長は、一倉定さんの教えが、自分の言葉で語れるのです。教えが血肉になっている社長さんだなぁと思いました。この会社さんには来年5月に、見学会を予定しています。こうご期待!


また、別の社長さんの話です。先日、P/Lの本の完成祝いでMGをその会社の会議室を借りて開催しました。


社員さんや内定者さんが10名程度参加してくれました。この会社は、デザイン性の高いリフォームを手掛ける会社です。この会社の理念は、「共に創り出す喜び」です。 お客さまとの関係性から、社風にいたるまで、すべてがチームワークの良さ、コミュニケーションの良さをベースにしています。


特に女性が建築に携わり長く働いていくうえで、何でも話せ、助け合って進めるチームの存在がとても重要だと感じています。とおっしゃっています。これだけ会社の向かう方向性がはっきりしていると、この理念に共感する学生しか応募してきません。


社員さんも内定者さんもあの大変なMG研修を、嫌な顔一つもせずに受講されていました。内定者の感想文には、次回頑張ります! と前向きなものや、参加させてもらえてありがたかったと感謝を述べられる方が多かったです。


理念のすごさを感じた瞬間でした。


だったら、理念を作ればうまくいくのかというと、そうではないと思います。仏を作って魂を入れずになりやすいです。


先日ご縁をいただいた辻騎志さんから頂いたレジュメに分かりやすい文章がありましたので、紹介させていただきます。


経営理念が会社に浸透しない一番の理由は、経営者自身が「経営理念」を自分ごとにできてないのが最も大きな理由です。「経営者が自分で作った経営理念なのに、自分ごとになっていないのはどういう事?」と思われるでしょう。それは経営理念を理性で作っているからです。


松下幸之助さんは「部下に100%伝えたかったら、1000%の想いで伝えよ」と言っています。1000%の想いを持つためには、経営者自身の人生をかけた想いが必要なのです。「声は心の乗り物」です。経営者自身が腹の底からそう思っていなければ口先だけのものになり、社員には伝わらないのです。


経営に強い思いをもってやっているのか? と問われています。さらに師匠のブログで追い打ちでした。


多くの会社には「経営理念」が掲げられていますが、果たしてそれは一貫され、利益以上に優先されているでしょうか?

常に一貫し、優先し続けることはとても難しいことですし、私もどこまで出来ているかわかりませんが、そこを「~だから仕方がない」と譲ってしまうから会社が強くならないと思うのです。(中略)


私はたくさんの経営者を観てきましたが、結局、その経営者のテクニックや知識ではなく、その経営者の生き方が、その会社を作っていると思うのです。私はたとえ足が遅くても同じ方向に歩いて行けば、遠くまで行けると考えています。

それなのに、足は速いのにあれをやったりこれをやったりして、同じところを行ったり来たりしている人がたくさんいると思うのです。


私は、理念で飯は食えるか! といったり、目先のもうけ話にあれこれと手を打ったりと、理念のない経営をしてきた私には耳の痛いことばかりでした。こんな失敗は私だけで十分です、私が失敗から得たことを伝え続けることで、ご縁のある社長に、より良い経営者になってほしいと思いがわいてきました。この思いを理念にまで落とし込み、これからは経営をしていきたいと思います。



​研修(MG)予定

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