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ゴールを明確に

「辻さん、今やっている事業の後継のことはどうされるのですか?」とA社長から、質問をされました。


A社長は、私よりも年下で50歳くらいです。お父さんが初めた金属加工の工場を10年くらい前から引き継いで経営をしています。


昨年に会った時に、このように質問をされました。私は「子供がまだ高校生なので、具体的にはまだ考えてない」と曖昧な返事をした思いがあります。


「ところでA社長はどうするんですか?」と逆に質問をしてみました。A社長の子供さんは大学を卒業されたので、てっきり後を継がすというのだと思っていましたが、その答えは、「会社を売ります」でした。


驚いた私は「誰に売るの?」と聞きました。そうしたら、私たちがよく知っているB社長の名前が出てきました。まだ話は煮詰まってないなぁと思いました。


また、会社を売った後のことを聞くと、私にとっては、想像を超える大きな事業を考えていました。構想は素晴らしいが、そのサービスをどうやって売るのか? どうやって作るのか? が、話を聞いても曖昧でしたので、少し不安になりました。


この時は、あんまり急いで結論を出さずに、いろいろと調べて、また半年くらいたって、変化したら話を聞かせてくださいと言って、別れました。


先日、A社長と会う約束ができて、進捗を聞きました。M&Aの会社を通じて、会社を売ることが決まったそうです。M&Aの話は、社内では誰にも相談ができません。信用できる人にしか話ができません。一人で悩む日々があったと思います。


買ってもらうのですから、業績アップしなければなりません。赤字部門の取引先とは値段交渉、生産効率のアップのために、かなり手を入れたそうです。それだけでなく、次の事業を広げる為に、新規取引のネタも探したと言ってました。


本当に売ると決めてから、売り先が決まるまでの期間は、ストレスが多かったと思います。最後までやり切ったことに頭が下がる思いでした。


A社長に売り先をどうやって決めたのと聞きました。「やっぱり、相手の社長とのフィーリングです。もう一つは、昨年話をした会社を販売した後にやりたいことを協力してもらえる会社にしました。」と言われて、あの構想は、本気だったんだと思いました。


構想の実現のために、大学などいろんな機関にも問い合わせをしたり、知り合いの方々に、相談をしていたそうです。


内容は、前回よりも具体的になっていました。またA社長の構想を実現するには、必要な部門が、買収先にはありました。前回よりも実現性は高まっているように感じました。すべて決まって、自分が本当にやりたいことに、これから専念できると言ったときのA社長の顔が、とても晴れやかでした。


自分のやりたいこと(ゴール)に向かっている人の言葉には魅力があり、素敵でした。私は、今あるものを何とか上手く使えないかと工夫に頭が回ります。A社長と話をして、そもそもそれはやりたいことだったの? と問われているような気持になりました。もう一度ゴールを考えるきっかけを与えてもらえました。



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