監視資本主義
私には大学生と高校三年生の子供がいます。彼らが中学生になるときに、携帯を買い与えることになりました。その時に、高校を卒業するまでという期限を付けて、携帯は居間でしか使わない。アプリは親の承諾が必要など使用ルールだけでなく、違反したときの罰則を子供たちと一緒に決めました。二人ともきちんと守っています。
高校の娘は、推薦で大学が決まりました。12月からは、ほとんど家にいます。入学が決まっているので受験勉強は必要ありません。これは想定外でした。ルールを守ってはいるのですが、居間で長時間SNSを見続けています。ルールも守っているので、何もせずにいました。だけどこの状態は良くないように感じられて、モンモンしていました。
SNSの脅威を伝えるには と悩んでいたら、助け船が現れました。ある方から「監視資本主義」を見せたらいいよと教えてもらえました。SNSの功罪の罪の方に、目を向けたネットフリックスの独自のドキュメンタリーです。同じタイトルの本もあるようですが、そっちは難しそうです。
監視資本主義とは、SNSを使うときに、閲覧時間、「いいね」を押すことや、次にどのページに行ったのかなど、さまざまな情報が集められ、その情報をもとに個人の特性を理解していき、その個人にとってさらに心地よい情報を提供し、適切な商品を紹介して広告料を稼ぐ仕組みです。
私もSNSを使っていて、このように自分の情報が洩れているのは分かっていましたが、まぁタダだし仕方ないなぁと思っていました。
インフルエンザで倒れていたときに、このドキュメンタリーを見てみました。グーグルやfacebookやXなどのSNSで開発をしていた方へのインタビューが主でした。
その中で刺激的な言葉が
「タダで商品を使っているのなら、あなたがその商品だ」
「どれだけ(SNSに)人生をもらえるか?」
「情報を売っていると思っているが、行動を予想するモデルを売っている」
「このモデルがあれば、人々の行動を予測できる」
私は、タダでSNS側に個人情報を提供している程度の認識でしたが、SNS側は、こうやって集めた膨大な情報をもとに、最新の心理学を駆使して人間の行動特性を検証していました。その検証の目的は、人の行動や考え方を操ることでした。
例えると、我々はモルモットでSNS側が研究者のようなもの。モルモットである我々のあるところを研究者が刺激する。結果右足が動く、別のところを刺激をすると、駆け足するなどと、刺激に対して、どちらに動くかを試されているということです。ただで情報を渡しているというレベルではなく、何か気味悪さを感じました。私の気味悪さを言葉にしてもらったのが次の言葉です。
「ずるい第三者が現れたら、金を出して人とのつながりを操作する」
「SNSによって、所属感や意思の疎通方法が操られる」
「スマホを見るたびに新しい情報があるように、気づかれずにプログラムしている」
「ユーザーの行動と感情を、気づかれるに操れるようになった」
2020年の時点で、このような成果が生まれているそうです。利用者が、SNSを利用し続けることで、無意識に行動や考えがSNS側に支配されている可能性があるのです。悪意のある人がこの技術を悪用すれば、民主主義はたぶん破綻するだろうと思います。
更に恐ろしいのが、開発した当事者すら原理を知っているにも関わらずSNSから離れられないと告白しているのです。そのくらい深層心理に食い込んでいるです。
このドキュメンタリーの中で、仮想の家族でSNSの侵害が描かれています。あるワンシーンで、家族で食事をするときに、母親が「食事の時間だけはスマホを見ずに、会話をしましょう」と提案し、子供たちが持っているスマホを鍵のついた箱に入れます。食事をはじめて会話をしようとしますが全員が盛り上がる話題がありません。しばらくすると、一番下の中学生くらいの娘が、席を立ち箱を壊してスマホを取り出して自分の部屋に戻っていく描写がありました。本当に大事な家族よりも、目先の承認欲求を満たしてくれるSNSの「いいね」が欲しい。SNSに毒されていることを表現していると思います。
うちの家でもさすがに食事の時は、スマホが鳴ったとしても無視をしています。ただ、食後は妻はテレビ、子供たちはそれぞれスマホ、私は大概寝ています(笑)。この映画と似たような情景になります。
ネットサーフィンは、まだ少し我々に主体性があったかもしれませが、SNSは相手がどうやって私たちに時間(人生)を使わせようかとそれも私たちに気づかれずにという意図を持って巧妙な手を打ってきます。深層心理までに影響を及ぼし、依存的にし、行動や考えを支配しようとしています。これは、とても恐ろしいものだということに気が付きました。
デジタルデトックスという言葉がはやりましたが、やはりネットから完全に離れる時間を設けるのは大事だと改めて思いました。もちろん家族でもこのドキュメンタリーを見たいと思います。
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