長く付き合っても知らなかった
私は、お中元のそうめんの販売から始まり、仕様を少し変えて、保険の景品、新聞の景品と、いくつかの業界を渡り歩いてきました。
振り返ってみると、私はずっと、同じ商品を、次々と新しい買い手に売り込んできたのだと思います。傍から見れば、時代の変化に合わせて柔軟に商機を捉えてきたように見えるかもしれません。
売上が伸びなくなると、私は決まって新しい市場(お客)を探しに行きます。今いるお客を深く掘るのではなく、まっさらな場所へ移ってしまうのです。
なぜそうしてきたのか。新しい市場を開拓することには、うまくいくかどうか分からない緊張感があります。新しい人に会い、新しい業界を知り、そこに商品を持ち込んでみる。探索そのものに面白さがあります。
一方で、今すでに取引のあるお客に「何か課題はありますか?」「この商品のベネフィットはどんなことがありますか?」と聞く作業は、地味です。すぐに売り上げにつながるわけでもありません。
また、商品開発の手間もかかります。だから私は、「この市場にはもうニーズがない」と考えて、次の市場(お客様)を探してきたのだと思います。
でも、本当にニーズがなくなったのでしょうか。お客様がその商品から本当は何を得ていたのか。そのベネフィットを考え直せば、商品を少し工夫することで、同じお客様の役に立ち続けることができたかもしれません。
それをせずに、「ここはもうだめだ」と決めつけて、その商品がすでによく使われている別の市場を探しに行く。すでにニーズがある市場に後から入っていくと、どうしても「この商品はいくらですか」という比較になりやすい。お客様の困りごとを理解した上で提案しているわけではないので、最後は価格で比較されてしまいます。
商品を買ってもらうだけなら、その商品を必要としている人を探せばいい。でも、本当に目指すべきなのは、「何か困ったことがあったら、この人に相談してみよう」と思ってもらうことなのではないか。
つまり、長期的に良くなるために必要なのは、商品を買ってくれる人を探すことではなく、ファンになってくれる人をつくることだったのだと思います。
ところが、これまでの私は、今すぐ売れる相手を探すことに一生懸命でした。その証拠に、お客様からの問い合わせは、「こんな商品はありますか」と具体的なものばかりで、お困りごとを聞くことはありませんでした。
責任者の方と名刺交換をしたことはあっても、その先、経営上の困りごとを聞いたことは一度もありません。何年も取引しているのに、その会社が今、何に困っているのか、私は知らない。それで「信頼関係を築いてきた」と言えるのか。そう考えると、少し恥ずかしくなりました。
「聞かなかった」のではなく、そもそも「聞く」という選択肢が、自分の中になかったのだと思います。
実は、この原稿を書いている今も、私は同じことをやっていました。10月に企画している10卓MGの参加者集めに苦戦しています。いつもの私なら、ここで新しいチラシの配布先や、新しい集まりを探しに行きます。
今回は、これまで参加してくださった方々に、「10卓MGに来てください」とお願いのメッセージを送りました。でも、これも同じでした。
本来、聞くべきだったのは、「今、どんな経営課題を抱えていますか?」ということだったのです。その課題を知った上で、「それなら10卓MGが役に立つかもしれません」とお誘いする。順番が逆だったのだと思います。
私はまた、商品を先に売ろうとしていました。これまでの私は、商品はそのままに、それが売れなくなるたびに、売り先を探し歩いてきました。景品もMGも。中身を変える前に、次の買い手を探してきたのです。
これからは、少しやり方を変えてみたいと思います。新しい市場を探す前に、今いるお客様をもう一度よく知る。「今、何に困っていますか?」まずは、そこから聞いてみる。「深掘り」とは何なのか、まだうまく言葉にできません。
ただ、新しい市場(お客様)を探す前に、今いる場所で一度立ち止まる。そして、目の前のお客様の困りごとを知る。まずはそこから始めてみようと思います。次号までに、これまで聞いたことのなかったお客様の困りごとを、一つでも聞いてみたいと思います。
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