自分が思う価値と、お客様が感じる価値
私は、MG(マネジメントゲーム)という経営研修のインストラクターをしています。MGは、参加者一人ひとりが社長になり、会社を経営するゲームです。商品の仕入れや販売、人の採用、設備投資などを自分で意思決定し、その結果を決算します。それを繰り返しながら、経営や会計を学んでいきます。
私はこれまで、私のインストの良さは「分かりやすさ」だと思っていました。MGは、初めての方にとって、特に社員さんにはなじみのないものですので、決して簡単なものではありません。だからこそ、できるだけ分かりやすく伝えたいと思って資料を作りこんできました。これが、提供している価値だと信じてきました。
ところが最近、「分かりやすかった」と言っていただけることと、また私のMGに来ていただけることは、同じではないと気づきました。
分かりやすかったと満足して、それで終わる方もいます。では、繰り返し参加してくださる方は、私のMGの何に価値を感じてくださっているのだろう? と考えてみると、私はそれをお客様に聞いたことがありませんでした。
自分で「分かりやすさが価値だ」と決めて、そこを一生懸命磨いていただけだったのです。そこで先日、長く私のMGに参加してくださっている方に、思い切って聞いてみました。
当然「分かりやすい」という言葉が返ってくると思っていました。ところが、返ってきたのは予想とは違う答えでした。
その方から出てきたのは、「安心感」という言葉でした。正直、意外でした。私は「分かりやすさ」を価値だと思い、そのために資料を作り、伝え方を工夫してきました。でも、その方は、私が価値だと思って磨いてきたものとは違うところを見てくださっていたのです。
なぜ私に安心感を感じてくださっているのか、私自身まだよく分かっていません。ただ、自分が「これが商品の価値だ」と思っていることと、お客様が感じている価値は、同じとは限らないのだと思いました。
そしてこれは、MGに限った話ではないと思いました。卸売業でも私は、「この商品なら売れる」「この価格なら売れる」「次はどの業界に持っていこう」と考えてきました。売れなくなれば、次に売れるところを探す。商品を少し変えたり、売る市場を変えたりしながら、ここまでやってきました。
でも、お客様が「なぜこの商品を買ってくださるのか」「なぜ私から買ってくださるのか」その生の声をどれほど聞いてきたでしょうか。振り返ると、ほとんど聞いていません。売れた理由も、売れなくなった理由も、自分なりに想像して納得していただけでした。
最近の私は、「自分が提供している価値が分からない」と悩んでいました。MGでも卸売業でも、自分は何を提供しているのだろう?と、自分の中だけで答えを探していたのです。
でも今回お客様に聞いてみて、そもそもそれは自分だけで考えて分かるものなのだろうか、と思うようになりました。自分では当たり前だと思っていることを、お客様は評価してくださっているかもしれない。
反対に、自分が「これが強みだ」と思っていることを、お客様はそれほど重要だと思っていないかもしれない。
もちろん、一人のお客様に聞いただけですから、これで私のMGの価値が分かったわけではありません。
お客様が感じている価値は、自分だけで考えていても分からない。「自社の価値は何だろう?」と考えることは大切です。でも、考えるだけで終わらせず、実際にお客様に聞いてみる。聞くのは少し勇気がいりますし、期待した答えが返ってこないこともあると思います。
けれども、その「予想外」の中にこそ、自分では見えていなかった価値が隠れているのだと思います。
私の場合、まずそこが抜けていました。皆さんは、お客様に「なぜうちを選んでくださるのですか?」と聞いたことはありますか?
もしまだでしたら、一番長くお付き合いのあるお客様に、一度聞いてみてはいかがでしょうか。自分が思っている答えと、お客様の答えは同じなのか。私も、もう少し聞いてみようと思います。
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