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上手く行くことが大事なことか?

私には、高校生の長男、中学生の長女がいます。クラブ活動やコロナの影響もありなかなか家族で出かけることが難しくなってきました。それで以前に行った沖縄旅行のことを思い出して楽しもうと、先日夕食をしているときに、「印象に残っていることは何?」と子供たちに聞きました。


私としては、綺麗な海で泳いだこと、熱帯魚と戯れたことや私が素潜りしてタコを取ったこと、美味しい食事をしたことや観光地の思い出などが出てくると思っていました。意外な答えが返ってきました。


「台風が来た時が一番印象的だった」というのです。


台風が接近した年は、二度ありました。その二度とも印象的だったそうです。飛行機は飛びましたが、着いた翌日は台風が上陸して、外出すらできない年がありました。次の日も海は荒れていて入れません。観光地はどこも閉まっていて行けません。結局予定してたことは、ほとんどできませんでした。私にとって最悪な旅行が子供にとっては一番印象深いというのです。子供たちにその理由を聞いてみました。


「初日に、海に行ったやん。2時間くらいしたら雨が降ってきたけど、今日しか海に入れないからギリギリまで頑張ってたやん。どんどんと雨粒が大きくなってきて、さすがに諦めて車に戻ったやん」と長男が切り出しました。


「みんなずぶ濡れで、車の中で着替えることもできず、父さんたちは、持ってきたバスタオルを全部使ってシートに座ってたやん。おかげで俺たちの分のバスタオルがなくなった。それでシートが濡れるからと言って立たされたんやで。その後(ヘッドレストの)棒を持たされたまま車でホテルへ向かったんや。チェックインしたらホテルのクーラーがめっちゃ効いて寒くて、ブルブルとふるえて立っていたやん。あんな経験は二度とできないから面白かったよ」と長男がいうと長女は大きくうなずきました。


よくそんな細かな情景を覚えているなぁと思いました。自分たちが立って車に乗ることやホテルでブルブルと震える非日常的な体験は、子供たちにはすごく印象的だったようです。

他に覚えているのは?と聞くと、那覇に向かう際に、高速道路が通行止めになったことや、所々で木が根元から倒れていたのもすごかったというのです。その時のことを思い出していると、


長女が「あ!思い出した。台風が最接近した日に、お昼を食べにいこうとホテルから車で出かけようとしたやん。お父さんがホテルから一歩出た瞬間に、ビニール傘が風にあおられて、めくれあがったやん。あんな面白い絵はテレビでしか見られないよ」というのです。

たしかに、コントか!という感じで傘が綺麗にめくれ上がりました。それもホテルのドアを出た瞬間でした。あのタイミングといい、あの傘の姿はあり得ないくらい見事でした。確かに、あれはすごかったと思いました。私にとっては最悪だった過去が、子供たちの話しを聞いて楽しい過去に変わってきました。



嬉しくなってきて、そうか、そうか、他に何か覚えているかな?と聞きました。


「離島に渡る予定の年があったやん。あの時は、台風の影響でフェリーが欠航して離島に渡れなくなったやん。泊まるところがないからめっちゃ焦ったよ。なんとか父さんが宿泊するところを見つけてくれて良かったよ」と長女が言い「あの時の父さんは頼りになったよ」と妻が言いました。この年は、離島へ行く予定をしていました。シュノーケリングや体験ダイビングの予約もして、とても楽しみにしていました。


台風の接近でフェリーが欠航になり、離島に行けなくなったのでした。私にとっては、かなり残念な年でした。離島へ行けなくなったので、新たに宿泊できるところを探す必要ができました。すぐに宿泊施設に電話をしました。夏のハイシーズンに当日宿泊できるようなことはありません。何軒も断れました。一時間くらい電話をしたら、ある民泊で予約ができました。覚えているのはこのくらいで、大変だったという印象しかありませんでした。


「あのときに民泊した家の近くで、ちょうどお祭りがあって、地元のお祭りに参加できたのは面白かったよ。夜はイモリの大合唱でそれもそれで印象深かったよ。台風だったけど、海にも入れたし楽しかったよ」と長女が言いました。


「あの民泊した家にカウンターがあって、○○(長女)ちゃんがお料理や飲み物を出してくれて、お店のママみたいで楽しかったね」と長男が言いました。

どちらの年も台風で、予定していたことがほとんどできない年でした。私にとってはとても残念な思い出でした。子供たちにとっては、非日常体験や緊急事態での対応がとても印象深かったようです。


私には、上手く行くことが良いことだという概念が強くありました。今回の旅行で言うなら、予定していたことをキチンとこなしていく。これが良いこと。予定してことができないのは悪いことと言う考え方です。


台風が来て悪いことだったと考えているのは私だけでした。子供たちは、台風が来た状況を受け入れて、その対応を楽しんでいます。台風が来る来ない関係なく旅行自身を楽しんでいます。


私は、旅行が予定通りに行ったか、行かなかったかと言う結果だけに注目を与えています。旅行そのものを楽しんでいません。台風が来た旅行はダメなことにしています。


この旅行を人生の一部と考えれば、子供たちは台風が来ても人生を楽しんでいます。私は台風が来たことで大切な人生をダメなものにしていることに気がつきました。私の方が人生をもったいなく使っているように感じました。


結果は、常に上手く行くとは限りません。上手く行かなかったときをダメなものにしてしまうと、無駄な人生だらけになります。せっかくの人生がもったいないですね。結果だけでなく、そのプロセスを楽しんだり、違う価値観でそのことを見るともっと楽しめるように思いました。そうすることが人生を大切にすることだと子供たちに教えてもらいました。







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