ご迷惑をおかけしたこと
「ご迷惑をおかけしたこと」とは、少し聞きなれない言葉かもしれません。内観法で使われる言葉です。内観法とは、吉本伊信先生が浄土真宗の「見調べ」から宗教色を取り除いた研修方法です。
特定の人から「していただいたこと」「して差し上げたこと」「ご迷惑をおかけしたこと」の3つのテーマを調べていきます。何度かやってみましたが、なかなか「ご迷惑をおかけしたこと」を、認めることが私には難しかったです。今回、やっちゃったなぁと思ったことをニュースレターにまとめました。
今年の課題は世界一面白い損益計算書の読み方という小冊子を書くことです。MQ会計を使って、損益計算書を従業員さんにも分かるような内容を目指しています。 MQ会計とは、たった5つの要素(P,V,Q,F,G)で損益計算書を表すシンプルな方法です。
この「MQ会計」という言葉は西順一郎先生が商標をお持ちです。西先生は80歳を超えるご高齢であるにもかかわらず、MQ会計を伝えるために今も現役で講師をされています。
先日本文が書きあがったので、その会場へいって、書きあがった本文を見てもらいに東京へ行ってきました。
本文を印刷したA4の紙が入った封筒を西先生に手渡しました。1ページ目を見た西先生の第一声が「目次はないの?」でした。私は、しどろもどろになって、「本文だけなんです。MQ会計という言葉を使っているので、先生に一度見てもらおうと思った次第です」と答えました。内心は、しまった! と思いました。不完全なものを先生に見せていることに気がつきました。
講義の間の休憩の時間を割いてまで、きっとお疲れであったにもかかわらず、私の原稿を読んでくださいました。その姿をみて、申し訳なくなって、「先生、もういいです。」と何度も心の中で叫びました。
私がやったことを例えると、プロの料理人が料理を作っている最中に、私の料理を、「この味は、どうですか?」と味見をしてもらっているようなものです。プロは時間が大事です。そんな忙しい方に、未完成のモノを味見してもらうのです。失礼極まりないなぁと思いました。
休憩時間をすべて使ってみてくれました。西先生は「最後まで読む時間がなくて申し訳なかったなぁ。内容は面白かったよ。」と言ってくださいました。ありがたさよりも申し訳なさでいっぱいになりました。
その時に、同じことをお願いした人がもう一人いたことに気がつきました。それは、毎月通っている経営の勉強会の師匠です。昨年、師匠から「辻さん、本を書いたらいいよ。辻さんの強みになるからぜひやってみたら」と背中を押してくれた方です。
背中を押してくれたことを良いことに、未完成の原稿を、何度も提出して感想を聞いて書き直しをしました。今思えば、酷いことをしていたなぁと反省しました。すぐにお詫びのハガキを出しました。
師匠からは「私もたくさんの人に迷惑をかけ、支えてもらって今があります。だからお互い様だと思います。それなのに若いときは、気づきにくかった気がします。もったいなかったと思っています。」と私のことを傷つけないように言葉を選んで返信をくれました。
西先生にお会いするまでは、先生から商標の使用許可を得ることを目的に、こちらの都合しか考えていませんでした。先生にご迷惑をかけるなんて想像もしていませんでした。休憩時間を割いて、西先生が私の原稿を一生懸命に見てくださる姿を見て、これはダメだと気がつきました。前回の7つの習慣のパラダイムがシフトした瞬間です。
今回の体験で、自分の都合を押し出しているときは、他人に迷惑かけている可能性が高いことに気がつきました。ある意味傲慢さの表れだと思います。
自分が強く主張しているときは、特に注意をしていきたいと思います。それでご迷惑をかけることはあると思います。気がついたときには、何かでお返しをしていきたいと思います。
追記 ごめんなさい。一番先の「師匠の」は見ないことにしてください。
師匠の私も知らない間にたくさんの迷惑をおかけしていそうです。今日のお話は自分のことのように身につまされます。西先生、師匠の温かい言葉に包まれるようですね。私も自分が頑張っているときにこそ気を付けて一来たいと思います。辻さん、ありがとうございました。