教育とは流れる川の水に文字を書くが如く空しいもの
「いい会社とか悪い会社とかはない。 あるのは、いい社長と悪い社長である。郵便ポストが赤いのも電信柱が高いのも全て社長の責任」といった数々の名言を発せられた一倉定さんから、直接コンサルティングを受けられたかとう製菓さんの環境整備見学をさせていただきました。
まずは、加藤社長の環境整備に講義をしていただきました。講義が終わり、トイレ休憩に行きました。ふとみると、女子トイレの扉が開いていて、女性社員さんが、洗面台の床に座ってスクレーパーを使っていました。
「何をされているんですか?」と答えをかけると、「床が汚かったので、ワックスをはがしてやり直しをしようとしています」と答えられました。「剥離剤は使わないのですか?」と聞いたところ、「剥離剤を探したのですが、なかったので、スクレイパーではがしているです」と笑顔で答えられました。
私も会社の床(新聞紙ほどの大きさ)のワックスを、毎日、剥離剤を使って、ワックスをはがして、塗りなおしています。剥離剤を使って、その大きさでも10分くらいはかかります。
トイレの洗面台の床は、その何倍も広いです。そこを、スクレイパーを使って、ワックスをはがしているのです。かなりの時間をかけてワックスをはがしていることが分かりました。
私なら、床の汚れに気が付いたとしても剥離剤が無ければ、剥離剤を注文してそれが届いてからやると思います。彼女は自分がやれることを即実行されていました。
次に工場内を見学させていただきました。また女性が床に座って、カッターを使って、床材のビニールを切っていました。
「何をされているのですか?」と質問をしました。その場所は仕掛品置き場でした。所々で、ビニールと床のコンクリートとが剥がれて、浮いているところがありました。そこを、女性社員さんが指さして、「この状態だと、人が躓いてコケるかもしれないですし、仕掛品を乗せたキャスターがひかかって、仕掛品が落ちるかもしれないので、補修をしています」と答えられました。
そして浮いている所を四角くカッターで切り取って、少し小さくして、裏面に接着剤を付けて、床を補修されていました。昭和感覚が抜けない私は、この作業を女性がするのか? 男性社員に依頼をしないのだと感心しました。
洗面台のワックスをやり直している女性社員さん、仕掛品置き場の床を補修されている女性社員さんお二人とも、汚れや不具合に気が付いたら、できない理由を探さずに、自分でできる事を、すぐに実践されていました。この実践力が素晴らしいと思いました。
講義の中で、玄関で脱いである社員さんのサンダルの向きを直すのを、加藤社長が続けてられたそうです。2年ほどして、加藤社長が脱いだ靴の向きが変わったとおっしゃられました。
環境整備を継続することで、気づく力があがり、気づいただけでなく、気づいたことを直したり、綺麗にしたりと、すぐに実践する能力が発揮されるのだと思いました。
加藤社長の環境整備に取り組む姿から「教育とは流れる川の水に文字を書くが如くむなしいものだが、それを岩壁に刻み込むような真剣さで取り組まなくてはいけない」とおっしゃられた森信三先生の言葉を思い出しました。少しでも加藤社長に近づきたいと思いました。
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