成果と妥協の分かれ道
- 辻 敏充
- 7月15日
- 読了時間: 5分
更新日:7月26日
2年前に、私のMG(マネジメントゲーム)に参加し、その後も何度か参加をしてくださっているKさんという方がいらっしゃいます。Kさんは、数十社の会社を経営されているビジネスオーナーです。
初めてお会いした際にKさんがおっしゃった言葉が、今でも心に残っています。「若い頃、決算書が全く分からなかった。どうやって勉強すればいいのかも分からなかった。だから上場企業の有価証券報告書を買ってきて、それを分析しながら読み方を覚えたんです。」
今ではネットで簡単に取得できますが、当時は書店で購入するしかありませんでした。まぁまぁ値段もしたように思います。Kさんは、本当に理解するために、お金と時間を惜しまずに、努力をする、本当に立派な方だと感じました。
そんなKさんが、グループLINEのような場で、印象的な内容を投稿してくださいました。素敵な言葉だったので、私自身の体験も交えて文章にまとめてみました。
Kさんは2023年に「MG300期を1年で達成する」という挑戦をしていました。その姿に対して、周囲からは「やりすぎでは?」という声も多くあったそうです。(300期を達成するには120日研修を受講するということです。)
しかしKさんには、揺るがぬ覚悟と明確な理由がありました。Kさんはこう語っています。「コツコツ努力しても、そこに妥協が含まれていれば、成果にはつながらない。最大限努力しても結果が保証されるわけではない。
けれど、少しでも手を抜けば、確実に目標から遠ざかる。それが現実であり、競争の厳しさです。」「大体できたから、このくらいでいいだろう」という小さな妥協の積み重ね。それは、いつの間にか目標から大きく逸れてしまう原因になります。
Kさんはこの「妥協の怖さ」を深く理解しています。どんな小さな仕事でも「やり切ること」「手を抜かないこと」に強いこだわりを持っておられます。そしてそれは、業績目標のような大きなことだけでなく、日々の整理整頓や社員教育といった“見えにくい努力”にも貫かれているのです。
まさに「目に見える結果の背後には、目に見えない行動の積み重ねがある」ことを体現されていると感じます。
Kさんの姿勢は、私の経営の師匠の考えとも重なります。師匠は「努力を積み重ねること」の大切さを繰り返し説いておられます。ただし、その努力が“質の高いもの”であることが前提です。
どれだけ時間をかけても、それが“やったつもり”の自己満足では意味がない。逆に、短時間でも本質に集中すれば、大きな成果を生むこともある。つまり、ただ「頑張っている」ではなく、「どんな頑張り方をしているのか」が問われていると思います。
私自身にも、それを実感する出来事がありました。私はこれまで、合計で1万3千枚以上のはがきを書いてきました。ご縁をいただいた方には、必ず全員にハガキを書くというのが、私の信念でありこだわりです。しかし振り返ると、最初の頃は「年間○○枚書く」という数字だけを目標にして、ただ“枚数をこなす”ことに夢中になっていました。
まさに、効率を重視し「数を増やす」ことばかりを追っていたように思います。そんな頃、師匠にこう言われたことがあります。
「ハガキを書く目的は何なのですか? ただ枚数を書いても何の価値もありません。80円のハガキが、80円以上の価値を生むように、これを狙っていますか?」
この言葉をきっかけに、私ははがきの“質”を見直すようになりました。「相手が読んで嬉しいと思うだろうか?」「読んだ人に勇気を与える言葉になっているだろうか?」と意識して書くようになりました。
しかし、最初はなかなか効果を感じませんでした。1万枚を超えたあたりから、少しずつ社内MG研修の講師の声がかかるようになってきました。
これは偶然ではなく、「心を込めて届ける」という姿勢への転換が、実を結んだのだと感じています。今は、「時間を短縮し効率化する」ことが求められています。けれど私は、“非効率に見える努力”こそが、最も大きな“効果”を生むと思います。
動画を倍速で観ても、すべてが身につくわけではありません。読書も、要約だけで理解したつもりになるより、一冊をじっくり読むことで深い気づきを得られることがあります。
仕事でも、すぐに成果が出る“効率的な手法”ばかり選んでいては、本当の信頼関係や継続的な成果にはつながりません。むしろ「やり切る力」「手間を惜しまない姿勢」こそが、長期的には圧倒的な差を生むのだと思います。
若い頃の私は、「やっても成果が出ない」と焦るたびに、「もっと効率よく」「もっと簡単にできる方法はないか」と考え、さまざまな研修に参加していました。しかし、その多くは一時的な効果こそあれ、長期的には何も変わりませんでした。モルヒネのように、一時的に痛みは和らいでも、根本的な治癒にはならなかったのです。
今になって思います。「自分は“努力”を積み重ねているつもりで、実は“妥協”を積み重ねていないか?」これを常に問い直す必要がある、と。
「微差大差」という言葉のとおり、成果の差は、最終的には「小さな差の積み重ね」で決まりまると思います。効率ばかりを追いかけて、本当に大切なものを見落としていないか。今一度、立ち止まって見つめ直すことが大事なのだと思います。
これからも私は、「効率」より「効果」、「スピード」より「深さ」を大切にしながら、コツコツと、妥協せず「やり切る努力」を続けていきたいと思います。
貴重なお言葉をありがとうございました!私自身の日々の意志決定に妥協がなかったか?考えるキッカケをくださいました!ありがとうございます。今後ともご指導頂けますと幸いです!