気づけなかったサングラスの色
- 辻 敏充
- 10月1日
- 読了時間: 4分
先月の勉強会でのこと。師匠が参加者のAさんとBさんに向かって「お二人は、人は怖いものという概念があるように思うよ」とおっしゃいました。その言葉を聞いたとき、「なるほど、確かにそんな印象はあるなぁ」と感じました。しかし、同時に「自分はそれとは違う」とも思っていました。
その後、師匠から「同じようにMGを教えているけれど、辻さんと私との違いは何だろう」と質問を受けました。私は返答に窮して、「違いはあると思いますが、具体的にはよく分かりません」と答えました。すると師匠はこうおっしゃったのです。
「辻さんは、人を恐れているようにみえる。別の言い方をすると、信用していないように見える。私だったら、もっと儲けたいから、うまくいっている人に自分のMGを見てもらったり、いろいろと聞きに行く。でも、辻さんはそれをしない。それは、相手を信用していないからだよ。」と言われました。
人を怖がっていると言われても、あまりピンと来なかったのですが、「人を信用していない」と言われると、思い当たることがありました。私が高校生の頃、父の会社が倒産するという経験をしました。その原因は、部下による架空売上を使った不正経理でした。
今も強烈に記憶に残っています。100円の商品を実際には半額の50円で販売する。しかし伝票上は100円で計上する。次に200円の商品を100円で売り、その100円を一件目の入金に充てる。これを繰り返していくのです。
見かけ上は売上が伸び、入金もあるので父は安心していたようです。(40年前のことを細かく覚えていること自体、私の中で根深い影響を与えている証拠だと思います。)しかし、やがて売掛金が回収できなくなり、不正が発覚。部下は詐欺で逮捕され、父の会社は倒産しました。
倒産後、母が私の部屋に来て「取り立て屋が来てもさすがに子供の部屋までは見に来ないと思うから、このお金を分かりにくいところに、隠しておいて」と言って50万円ほどを手渡されました。私はそれを畳の隙間に隠しました。結局は取り立て屋は家に来ることはなく、そのお金は母親に返しました。
この出来事が、私の中で「人を信用するのは危ないことだ」という価値観を強く植え付けたのだと思います。もしかするとそれ以前にも似た経験があったのかもしれませんが、この時にはっきりと確信に変わったのです。
師匠の言うように、人を信用していなければ、うまくいくはずがありません。思い返せば、私の会社で女性のパートさんは長く働いてくださる一方、男性社員がなかなか定着しなかった理由も、今なら分かります。
女性に対しては、私は無条件で「信用している」からこそ自然に関心が湧き、人間関係も深まっていきました。けれど男性に対しては「信用して危ない」と見ていたため、少しのミスも気になり、注意ばかりが増えていました。その結果、信頼関係を築けなかったのだと思います。
さらに、10年近くお世話になった滋賀ダイハツの後藤会長が主催する輝き塾でも、私は自社の状況を後藤会長に率直に開示して本気で質問することを避けていました。その時は「自分の規模では質問できない」と都合のいい理由を作っていましたが、今思えば「会長に聞いても良い答えをもらえない(=信用していない)」と決めつけていたように思います。
師匠から「お金がかかわらないときは、辻さんは良い人なんだけどね」と言われたことも、今はよく分かります。お金が絡まなければ信用の問題は表に出ず、「良い人」でいられる。
しかし本質的な人間関係を築くには、無条件の「信用」が不可欠なのです。今回の気づきは、私にとって非常に大きなものでした。
「人を信用する」とは、過去に深く植え付けられた価値観と向き合い、自分を開いていくこと。それができて初めて、本当のスタートラインに立てるのだと思います。自分のサングラスの色を教えていただいたこと、本当に感謝しています。ようやく現状把握ができたように感じます。根強い価値観と向き合い、自分を変えていきたいと思います。
辻さん、いつもブログを拝見し日々勉強させていただいております。
今回の文章で気になる点があり、差し出がましいこととは存じますが、意見させていただきます。信用では無く、信頼が適切かと存じます。よろしくお願いいたします。